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彗星(などボヤッとした天体)の観察のために

 

<彗星の「明るさ」とは>

 彗星はほとんどの場合、淡くボヤッと広がっています。このように「拡散」した天体の明るさは、もしも拡散していなかったらという前提のもとに、点状である恒星と比較して観測されるものです。
  ですから、彗星の状態(拡散のしかたや大きさ)によっては、同じ明るさの恒星と比べて、ずいぶん暗く感じるかも知れません(実際、暗く感じる方が多い)。
 そもそも、彗星は「活きた天体」です。ある日突然明るくなったり(暗くなったり)することもかなりあります。先入観を持たず、「今日は、どんな明るさで、どんな振る舞いを見せてくれるのかな」という気持ちで観察しましょう。

<彗星の構造と名称>

 彗星の正体は「汚れた雪だるま」と言われているとおり、その本体(核)は、氷の中にチリがたくさんつまった状態です。核の直径は通常数百mから数10kmの小さなもので、核そのものが望遠鏡で見えることはありません。
 望遠鏡で見て、中心部の特に明るい部分を「中央集光(部)」とよび、そのまわりをガスの固まりのようにみえる「コマ」が取り囲み、太陽の反対方向に尾が伸びています。尾は細かなチリからなる「ダストテイル」とガスの尾「イオンテイル」に分けられます。
 カラー写真では、「ダストテイル」は赤っぽく、「イオンテイル」は青っぽく写りますが、肉眼ではほとんど色の違いはわかりません。また、ダストテイルの光の方が、肉眼に感じやすいのですが、イオンテイルはあまり見やすくありません。
 なお、今回出現した「池谷・チャン彗星」は、明るい中央集光部にかなり引き締まったコマ、そして発達したイオンテールが特徴的です。
3月中旬に入り、ダストテールも発達してきました。

 図のような彗星の細かな部分は、もちろん明確に分かれて見えるものではありません。また、暗く澄んだ空でないとなかなか眼ではわからないものです。できるだけ、空の条件の良い場所で観察して欲しいものです。
 「池谷・チャン彗星」の場合、都市部では肉眼だけでは、尾は全くもちろんのこと本体も見えないかも知れません。双眼鏡を使えば、街の明かりが多少あっても、中央集光部とコマの一部、もしかして尾の一部も見えるかも知れません。

 

<彗星や星雲は、写真のようには見えません

 最近、ハッブル望遠鏡やすばる望遠鏡など大望遠鏡で撮影されたすばらしい天体写真を目にすることが多くなりました。ところが、同じ天体を小型望遠鏡で見ると、色もなく細かな模様もほとんど見えません。
 写真でみた姿を最初に頭に入れながら見ると、中にはがっかりする方もおられるかもしれません。
 でも、それが「人間の目でとらえた生の宇宙の姿」なのです。じっくりと見れば、かすかな姿の中にも大宇宙から届くメッセージを感じ取れるはずです。ぜひ、星雲や彗星など暗く淡い天体をよく見るためのコツを身につけてください。
 

<星雲や彗星など暗く淡い天体をよく見るコツ

それは 「そらし目法」

 人間の目は、網膜の中心より周辺部のほうが暗い光に感じる力(感度)が高いという性質があります。
 暗い天体や淡い天体を観察するときは、目的となる天体を「にらみつける」のではなく「そらし目」で見るようにします。具体的には、望遠鏡の視野の周辺に目線を置き、しかも全神経は目的とする天体に集中させるというものです。やってみると以外に難しいのですが、是非コツを身につけてください。

 

望遠鏡でじっくり観察するコツ>

(こと座惑星状星雲・M57を例に)

@まずは、低倍率で、目的の天体の存在を確認

目が慣れていないので、ほとんど何も見えてこないかもしれません。 そらし目にしながら見ると、恒星の点状の光とは違うボウっとしたものが見えてくるかもしれません。
おそらく、それが目的とする天体です。

 

 

Aよく見えない場合は、少し倍率をあげる。

倍率を高くすれば、背景の空の明るさが暗く見えるので、コントラストがはっきりしてきます。

 あまり高くしすぎると、天体そのものの明るさも暗くなり、またはっきり見えなくなってしまいますので、少しずつ高くしていくようにします。

 

B見える場所を良く覚えておき、細かな構造などに注意しながら、さらに倍率を上げてみる。

Cよく見えるぎりぎりの倍率まで上げてみる。

あまり倍率を上げすぎると....そう、みずらいのです。

 

 

 

 

D一番よく見える倍率まで下げて、じっくり観察する。

倍率が高すぎると、かえって見えにくくなることがおわかりになったことでしょう。今度は、逆に少しずつ倍率を低くしていってみて下さい。すると、先ほどまでより明るくはっきり見えてくるはずです。

 これは、倍率を少しずつ上げながら、長い時間その天体を観察し、目が暗い天体に慣れてきたためです。

 

空気のゆらぎがピタリと止める瞬間があります。そのとき、ほんの一瞬ですが、細かな構造が見え、すばらしいながめを楽しめるかも知れません。