初歩の天体観察 bQ |
肉眼・双眼鏡で見る星空スポット
第2回 初歩の天体観察資料 2000.6.3
【2000年8月10日更新】
肉眼で楽しめる星空の世界
☆星座をみる
星座は全天で88個あり、北日本では約55個を見ることができます。星空に慣れてきたら、いったい何個の星座を見つけられるか、星図の通りに星をむすぶことができるか、南の地平線ギリギリの星座を見つけることができるか、などテーマを持って星座をさがしてみてもいいでしょう。
星座観察は星空観測の第一歩ですが、以外と奥の深いものです。☆天の川をみる
夏や秋・冬の季節、空の暗いところでは淡い光の帯が肉眼でもよく見えます。夏の夜、七夕の伝説を思い浮かべながら、天の川をながめるのも風流ですね。 天の川の正体は、私たちの太陽系を含む約2000億個の星の大集団・銀河系を、内側からみた光の帯。夏の天の川は銀河系の中心方向にあたり、一年中で最も濃く明るくみえます。反対に、冬の天の川は近くにある星々をみていることになり、淡くさらさらした感じがします。 春の星空には天の川は見えません。それは、銀河系の外を見渡しているからです。 |
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☆月・月食をみる
月は最も身近な天体で、望遠鏡を使わなくてもその模様が見える唯一の天体です。
三日月のころは、地球から反射した太陽の光が月の影の部分にあたり「地球照」という見事な光景が見られ、満月になると月の模様がさまざまな姿に連想できて楽しくなります。
月の模様が実際にどんな形に見えるか、実際の月で確かめてみてください。
うさぎのもちつき いっぽんはさみのかに
ライオン 女の人
今年は、7月16日に、継続時間1時間47分という、最高条件の皆既月食があります。
皆既月食になると、赤銅(しゃくどう)色の神秘的な光をたのしむことができます。
☆太陽・黒点をみる
まずはじめにお断りをしておきますが、太陽ほどまぶしい天体はなく、ふつうの方法で太陽をじっと見ると、目を確実に痛めます。また、間違っても双眼鏡や望遠鏡で直接のぞかないでください。失明します。
肉眼で太陽を見るには、「太陽観測用ガラス」や「日食サングラス」など、市販されている専用のフィルターを使ってください。今年は、太陽の活動のピークにあたり、肉眼でも見えるような巨大な黒点が、しばしば見えています。
<使用して良いもの>
<使用していけないもの> ○太陽観測用専用フィルター ×露光・現像済みカラーフィルム ○露光・現像済み白黒フィルム ×半透明の下敷き ×サングラス *薄雲を通して見ても危険です。 |
☆惑星をみる
肉眼でも見える明るい惑星は、水星・金星・火星・木星・土星の5個です。暗い空では、これに加えて天王星を見ることができます。これらの惑星は、誕生日の12星座の間を、毎日少しずつ動いていきます。
水星や金星は、地球の内側を回るので、夕方か明け方しか見ることができず太陽に近い位置にいるときはみることができません。一方、火星や木星・土星などは、太陽の反対方向に回るとき(これを「衝・しょう」とよぶ)があり、一晩中見える絶好の条件になります。
惑星がいつ見えるかは、天文年鑑や天文観測年表などの暦や天文雑誌を参考にします。
6月初旬〜中旬・太陽系第1惑星水星がみごろ といっても、水星は最も内側をまわり、いつも太陽に近くて見つけずらい惑星です。あの有名なコペルニクスも見つけられなかったほど。でも、年に何回か、太陽から見かけ上離れることがあり、お目にかかるチャンスが訪れます。
夕方、太陽の東側に最も離れ見やすくなるとき、これを「水星の東方最大離角」といいます。朝方、太陽の西側に最も離れるときは「水星の西方最大離角」です。今回の東方最大離角は6月9日で、太陽から24度離れ、夕方見える水星としては今年最良の条件となります。
今回は、ふたご座の中でみやすくなり、カストルとポルックスを目印にすれば、見つけやすいでしょう。
☆流星をみる
夜空をながめていると、時々、流星(流れ星)をみることができます。
流星は、ふつうの夜でも1時間に数個は流れます。ただ、運良く自分の見ている方向にながれかったり、暗かったりするので、それほど多くは感じません。また、たいていは1秒も輝きませんので、見逃すことが多いと思います。願い事をかなえてほしい人は、辛抱強く空をながめ、短い願い事を3回唱える練習を日ごろからしておきましょう(?)
さて、辛抱強くない人に朗報
(!)です。流れ星の中には、毎年決まった時期に流れる常連〜流星群〜があります。中でも、夏のペルセウス座流星群、冬のふたご座流星群は見事です。さ来年あたりまで、しし座流星群も非常に活発ですので是非みたいものです。流星の中でも、金星(マイナス4等)以上輝きをもつものを火球といいます。まれに、満月くらいの明るさに輝く大火球が目撃されることがあります。
☆人工衛星をみる
現在、地球の周りには約3000個の人工衛星が回っています。暗い空ですと肉眼で見える人工衛星の数は数百個、双眼鏡を使うと千個ほどの衛星を観測することができます(もちろん一度に見えるわけではありません)。人工衛星を見るチャンスは、宵や明け方。数十分のうちに数個は目にすることができます。飛行機はチカチカと点滅するのに対し、人工衛星は点滅しないので見分けがつきます。人工衛星は太陽の光を反射して輝くので、太陽光の届かない深夜に見えることはまずありません。また、地球の影に隠されるとき、すーっと暗くなって消えていくのも人工衛星の特徴です。
スペースシャトルや国際宇宙ステーションなど、大型の人工天体は、時に木星など惑星並みの明るさに輝くことがあります。人工衛星の軌道は、地上からの管制で変更されますので、どの人工衛星が見えるのかを知るには、インターネット等で最新の情報を得ることが必要です。☆彗星をみる
彗星は、尾をたなびかせる姿が特徴で、ほうきぼしともよばれます。近年、観測技術の発達によって、年間50個ほどの彗星が観測されていますが、ほとんどは大望遠鏡で写真にとらないと観測できない暗いものばかりです。中には、尾すらない彗星もあります。小型の望遠鏡で見えるのは1年に数個。双眼鏡でも見える彗星となると、2〜3年に数個。
百武彗星(
1996)ヘール・ボップ彗星(1997)などの大彗星が相いついで現れましたが、このような肉眼でも楽に見える大型の彗星は、平均すると10年に1個か2個しかありません。 彗星は、尾や形が日を追うごとに変化し、見る者にとって興味は尽きません。現在、リニア彗星が、地球に徐々に接近し、7月末に約5等級まで明るくなる見込みです。もしかすると今世紀最後の肉眼彗星になるのではと期待する声もあります。☆小惑星をみる
現在2万5千個以上の小惑星が確かめられています。大半は数10kmから数百mの小型の天体で、小型の望遠鏡で見えるものは年間20個程度です。ただし、中には大型のものもあり、19世紀最初の夜に発見された(
1)ケレスをはじめとして(2)パラス、(3)ジュノー、(4)ベスタを4大小惑星とよびます。このうち、ベスタは最も明るく地球との位置関係が良いときは5等台になり、暗い空だと肉眼でも見えます。今年7月16日の皆既月食中は、赤銅食の暗い月のすぐそばに5.7等級のベスタが近づいており、肉眼で小惑星を見てみる絶好のチャンスです。 ☆二重星をみる 一見すると1個にしか見えない星も、よくみると2つ以上の星がよりそっていることがあります。このような星を重星といいます。望遠鏡を使うと、たくさんの二重星や三重星を見ることができます。中には、うしかい座のプルケリマやはくちょう座のアルビレオなど、色の対照がこの世のものとは思えないほど美しいものがあります。 肉眼でも楽しめる主な二重星は、以下の通りです。自分の目だめしもかねて、ぜひ探してみてください。おおぐま座・ミザールとアルコル、こと座・ベータ星、やぎ座・アルファ星
☆変光星・新星をみる
夜空の中には、時間によって明るさを変える星が意外に多くあります。明るさを変えるしくみとしては、@互いに回りあっている2つの星(連星)が、互いに隠しあう。<食変光星>
A進化の進んだ星(赤色巨星)が、膨張収縮する。<脈動変光星>
B表面の明るさに濃淡のある星が自転する<回転変光星>
C連星の一方の星のガスがもう一方の星に振り注ぎ爆発する<新星>
D一生を終えた巨大な星が、中心核から大爆発を起こす<超新星>
Eその他
などに分けられます。
肉眼でも観察できるる変光星は次の通りです。
食変光星:ペルセウス座アルゴル(
2.1等〜3.3等、2.8日)こと座ベータ星(
3.3等〜4.3等、13日)おうし座ラムダ星(3.5〜4.0等、3.9日等)
ぎょしゃ座エプシロン星(
2.9〜3.7等、9892日等)脈動型変光星:くじら座ミラ(2等〜
10等、332日)ケフェウス座デルタ星(3等〜4等、
332日)はくちょう座カイ星(3等〜
14等、408日)新星は、年数個発見されていますが、肉眼でも見えるような明るいものは、数年に1個しか現れません。超新星は、よその銀河では近年一年間で150個も見つかっていますが、どれも非常に暗く、小型望遠鏡でも見えるものでも数年に1個です。肉眼でも見えた超新星は、銀河系のすぐとなりの銀河・大マゼラン雲に出現した1987
A(2.9等)ぐらいのもので、銀河系内に出現した極めて明るい超新星は、1604年のケプラー新星(マイナス2.5等)以来出現していません。 新星や超新星、彗星・小惑星などは明るさが変化し、発見のニュースを知った頃にはもう見えなくなってしまっている、ということがよくあります。常に新しいニュースに耳を傾けたいものです。
*現在、肉眼でも容易にみえる「さそり座デルタ星」が明るくなっています(→詳細)。
星雲星団をみる
太陽系の外側に広がる大宇宙には、たくさんの天体があります。そのうち、ガス上の天体や銀河系外の銀河を「星雲」、星の集団としてみえる天体を「星団」といいます。
双眼鏡でひろがる星空の楽しみ
双眼鏡を必ず向けたい星ぞらスポット
*先頭の数字は、次のページから掲げた星図(まだアップロードしていません)中の番号) *太文字は北半球で肉眼で見える明るい星雲星団は以下の通りです。
<冬>
1 プレアデス星団(M45) おうし座・散開星団
2 ヒアデス星団(Mel111) おうし座・散開星団
3 M42・43 オリオン座・
4 M36・37・38 ぎょしゃ座・散開星団
5 M35 ふたご座・散開星団
6 M41 おおいぬ座・散開星団
6-b M46・47 おおいぬ座・散開星団
<春>
7 プレセペ星団(M44) かに座・散開星団
8 ミザール・アルコル おおぐま座・二重星
8-b Mel111 かみのけ座・散開星団
<夏>
9 M6・7 さそり座・散開星団
10
M8 いて座・散光星雲11
アルビレオ はくちょう座・二重星11-b
スモールクラウド たて座・銀河の特に濃い部分<秋>
12 M31アンドロメダ銀河 アンドロメダ座・系外銀河
13
M33 さんかく座・系外銀河14
h-χ(エイチカイ)二重星団 ペルセウス座・散開星団
こんなに有効、双眼鏡
・望遠鏡より手軽で、機動力に優れる。
・木星の4大衛星がみえてくる。金星の形がわかる時もある。
・アンドロメダ銀河やオリオン大星雲など明るい星雲星団、
大彗星は、よりはっきり見える。
・Mel111やプレセペ星団など面積の大きい天体は、
望遠鏡よりよく見える。
・暗い空では7等星以上(全2万個近く)の星が見える。
・町明かりでは見えない星も見える。星座を形作る星をすべ
て見つけられる。
地平線近くの明るい星や惑星が見える。・慣れてくれば、数十ないし百個以上の星雲星団が見える。
・数十の二重星、5・6個の連星が見える。
・5等星ぐらいまでの星の色がわかりやすくなる。
・プラネタリウムに持ち込んでも、すごい星ぞらが楽しめる。
・その他、レジャ−・ビジネス・ひまつぶしetc・・・いろんな用途に使える。
双眼鏡の使い方
双眼鏡は、ふたつのピント合わせのつまみがあり、ちょっとしたコツが必要です。また、手ぶれしないように、しっかりと固定することも大切です。
(
1)目幅合わせとピント調整@左目だけでのぞき、真ん中のつまみでピントを合わせる。 | A右目だけでのぞき、右の接眼レンズのつまみでピントを合わせる | B左右両方でのぞき、微調節する |
(2)固定のしかた
・右上の写真のようにひじを使って、 ぐらぐらしないようにする<ひじ鉄法>。
・また、専用の固定金具を使い、三脚に固定する<三脚固定法>
(3)暗い天体を観察するコツ
「そらし目法」
「やぶにらみ」せず、網膜の端を使って淡い光を感じる。 コツは、決して見つめず、全神経はその天体に集中させること。
双眼鏡選びのポイント
<三脚を使わずに手軽に使いたい方は>
・なるべく軽量・小型のもの(3cm8倍タイプが理想)
・見える範囲(視野)の広いもの(9度が理想・外国製では20度もある)
・「倍率」を売り物にする派手な宣伝商品は???
<三脚をつかって、じっくりと星をみたい方は>
・5cm8倍〜5cm10倍タイプのもの(手持ちは疲れます)
・レンズの材質の良い高級タイプ
<望遠鏡がわりの本格的な観測もしたい方は>
・8cm20倍タイプの大型双眼鏡(小型双眼鏡と併用)
・視野が狭く倍率が高いので、星図を使いこなせることが必須。
・お金があれば欲しい15cm30倍(彗星捜索に理想)
<双眼鏡選びの共通事項>
・大きさ・重さ・倍率・視野角が、自分の目的に合っているか、よく考える。
・レンズに乱反射・防滴のコーティングがされていないと、くっきりみえなかったり、息で接 眼レンズが曇ってしまう。
・買う前にのぞいてみて、周辺にゆがみがないか確かめる。
・周辺部に、赤と青の色のにじみが出ないか確かめる。双眼鏡を電灯に少し傾けて向け、白い 紙を接眼レンズに近づけてもわかりやすい。
・眼鏡をかけている方は、眼鏡をかけたままよく見えるか(周辺が黒く欠けないか)確かめる。 また、眼鏡をはずしてみてよく見えるか確かめる。
すぐれた観測機材・2つの眼 <肉眼>
肉眼:口径7mm超広角双眼鏡☆形 式:屈折式(超高性能頭脳画像処理) ☆レンズ直径:7 mm 注1☆分解能:10分〜1分〜30秒 注2 (視力: 0.01 〜 1 〜 2) ☆倍 率:1倍 ☆視野角:180度 ☆一度に見える星の数:約3000個 注3注1:ただし年齢がすすむと口径は小さくなります。 注2:視力1は角度の1分(1度の60分の1=60秒)を見分ける力です。 視力=1÷見分けられる角度 (単位は分) 見分けられる角度=1÷視力 注3:月明・市街光などのない理想的な条件下で、20分間暗やみに慣れた場合。 |
補足
1:レンズの大きさによる光学的な性能
口径(mm)
集光力(肉眼=1)
分解能(秒)
極限等級(等)
有効低倍率
有効最高倍率
肉眼
7
1
〜
306
1
1
双
眼
鏡
望遠鏡
30
31
2
.3210
.37.5
30
60
73
1
.9310
.79
60
80
131
1
.4511
.312
80
100
204
1
.1611
.818
100
150
460
0
.7712
.723
150
200
820
0
.6813
.330
200