年間天文現象

 大崎タイムスに掲載されたパレットおおさきの星のおたよりです。全5回。

2022年の天文現象 第5回
2022.1.12 大崎タイムス連載
「その他の星空の話題・天文現象」

★七夕,お月見,月面X★
伝統的七夕は8月4日
 7月7日は,七夕。おりひめ星と彦星を見上げながら,星空に願いごとをする日です。7月初旬というと梅雨の最中で,星空はなかなか期待できない時期ですが,本来は旧暦7月7日の行事です。今年の伝統的七夕は,8月4日。梅雨明け後の夏の夜空で,ペルセウス座流星群とおりひめ,彦星を楽しみたいものです。


お月見
 中秋の名月は,旧暦8月15日の十五夜に見える月。今年の中秋の名月は9月10日で,二度目のお月見である十三夜は10月8日です。中秋の名月は中国の「中秋節」に由来する風習ですが,十三夜は日本独自のお月見で,後(のち)の月ともいいます。また,十五夜は芋名月,十三夜は栗名月の呼び名も。秋の旬の恵みを味わいながら,お月見を楽しみましょう。


月面X
 上弦の頃の2時間ほど,月の欠け際に光の十字形が見られることがあり「月面X」として話題になります。今年は,5月8日と12月30日の宵に見やすい時間帯がある予報です。来年は,見られるチャンスがほぼありませんので,望遠鏡がある方はぜひ観察しましょう。

 以上,今年の主な天文現象を紹介してきました。これ以外にも星空では毎晩のように楽しい出来事が起こっています。ぜひ,星空を見上げください。また,1月15日から28日まで,アポロ月探査機が採取した「月の石展」も開催されます。大崎生涯学習センターのプラネタリウム館は,皆さんが星空や宇宙を身近に感じていただくためのお手伝いをいたします。今年も,どうぞよろしくお願いいたします。
完 
(文・写真:大崎生涯学習センター長 遊佐徹)
2022年の天文現象 第4回
2022.1.11 大崎タイムス連載
「流星群と彗星」

 1月のしぶんぎ座流星群,8月のペルセウス座流星群,12月のふたご座流星群は,毎年安定した出現があり「3大流星群」といわれます。そのうち,しぶんぎ座流星群が最高条件で観察できます。ペルセウス座流星群は,満月に邪魔されて最悪の条件。ふたご座流星群は,月が昇る夜の初め頃は条件良く観察できます。

★12月14日 ふたご座流星群を見よう★
 毎年,12月14日頃,たくさんの流れ星が流れます。流星は,ふたご座の一角を中心に四方八方に流れます。放射点のある星座名をとって,「ふたご座流星群」と呼んでいます。出現のピークは12月14日22時ごろ夜とみられており,前後の数日間は活発な出現が期待できます。
 流星は,ふたご座だけでなく空全体にまんべんなく流れます。1分間に数個流れることがあれば,10分以上ひとつも飛ばないこともありますので,広い範囲をじっくり眺めましょう。今年は,下弦前の明るい月が夜半前に昇ってきますが,月の光が直接目に入らないようにしながら観察しましょう。


ペルセウス座流星群
 お盆の頃にたくさんの流れ星が楽しめるペルセウス座はことし,満月が一晩中夜空を照らしますので,暗い流星が見えず,条件は最悪と言わざるを得ません。

その他の流星群
 3大流星群のほかにも12個ほどの流星群が比較的活発です。そのうち,4月23日頃の「こと座流星群」,5月6日頃の「みずがめ座η流星群」,10月21日ごろの「オリオン座流星群」は,月の影響も少なく好条件で観察できます。それ以外は,全般的に悪条件です。

パンスターズ彗星
昨年末に,レナード彗星が3等級まで明るくなり,双眼鏡で観察できました。来年は,いまのところ肉眼で楽に見える彗星はありませんが,5月にパンスターズ彗星(C/2021O3)が地球に接近して,双眼鏡で観察できる5等台まで明るくなりそうです。おととし7月に,肉眼でも雄大な尾が楽しめたネオワイズ彗星のような大彗星の出現を期待したいものです。
写真:2021年12月のレナード彗星 大崎生涯学習センターで撮影

(文・写真:大崎生涯学習センター長 遊佐徹)
2022年の天文現象 第3回
2022.1.10 大崎タイムス連載
「火星接近の年」
★12月1日 火星が「中接近」★
 太陽系の第4惑星・火星は,その赤い輝きから人々の注目を集めてきました。今年は,2年ぶりの火星接近の年で,年末にかけて,冬の星空の中で赤い輝きを見せてくれます。


 火星は,地球のすぐ外側を回る惑星ですが,直径は地球の半分ほどしかないため,地球接近の頃以外は,詳しい表面の様子を観測することが難しい天体です。しかも顕著なだ円軌道のために,地球とどこで接近するかによって,最接近時の距離は大きく変わります。2016年5月と2018年7月には6000万㎞を切る「大接近」,2020年10月の接近は6200万㎞の「準大接近」でしたが,今回は8100kmを超える「中接近」です。


★惑星の動き★
内惑星の見える時期
 地球より太陽に近い惑星を内惑星といいます。そのうち水星が夕方に見やすいのは,1月初旬,4月末,8月末,12月下旬です。金星は,年明けとともに夕方の見ごろを終え,2月ごろから明けの明星として朝方の東の空に回り,春から秋にかけてまばゆく輝いて人目を引くようになります。

秋に木星と土星が観測の絶好期
 秋の星座で,8月15日に土星,9月27日に木星が「衝」を迎え,そろって観測の好期になります。衝というのは,外惑星が,太陽-地球を結ぶライン上にほぼ一直線に並んだ状態です。この頃,地球に一番近いうえに一晩中観察できる位置関係となり,絶好の観測好期といえます。
土星は,約30年で太陽系を一回りする関係で,地球から見ると約15年に1度,環が見えなくなったり傾きが最大になったりを繰り返します。2025年には,環が一直線になり,一時的に環が見えなくなる「土星環の消失現象」が起こります。今のうちから環の変化を追いかけてみましょう。パレットおおさきの星をみる会では,秋に土星や木星を観察していただきます。


★明け方の天文ショー「惑星たちのランデブー」★
 昨年の秋から今年の年始にかけて,夕方の空に木星と土星,金星,水星が並んで輝き,とてもきらびやかな星空を楽しむことができました。そんな夕方の天文ショーは間もなく終演を迎え,春には,明け方の空が惑星大集合の素晴らしい舞台に変わります。
 その天文ショーの幕開けは,4月です。明け方の東の低いところに,惑星たちが移ってきたかと思うと,4月5日には,火星と土星の大接近が起こります。あまりに近すぎて,肉眼では一つの星にしか見えないかもしれません。双眼鏡で,二つの星が寄り添っているように見え,望遠鏡では土星の環と火星の赤い表面の様子を同時にみることができるでしょう。

 4月中旬になると,金星の下に,木星も姿を現すようになり,中旬には木星,金星,火星,土星の4つの明るい惑星がほぼ等間隔に整列して見えるようになります。肉眼だけで十分きれいに見えます。朝は苦手,という方も多いと思いますが,ぜひご覧いただきたいと思います。


 明け方の天文ショーは,まだまだ序盤です。5月には,金星と木星の大接近。そして,6月には,なんと,すべての惑星が勢ぞろい。肉眼でも見える水星・金星・火星・木星・土星だけでなく,双眼鏡で観察可能な天王星・海王星が東北東の低空から南の中空までずらりと並びます。こんな狭い範囲に,全惑星が並ぶのは記憶がないことです。さらに,6月中旬から下旬までは,そこに月が加わります。
梅雨時期で天気が心配なところですが,晴れたらぜひ明け方の天文ショーを堪能してほしいものです。もし曇ったとしても,パレットおおさきのプラネタリウムでその光景をご紹介したいと思いますので,お楽しみに。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)
2022年の天文現象 第2回

2022.1.9 大崎タイムス連載
「惑星食を見よう」

 一見普遍に見える星空や宇宙ですが,夜空を眺めていると意外に変化が多いことに気づかされます。分かりやすいのは月の満ち欠けや動きです。時として,その過程で月食や日食が起こります。地球の兄弟星・惑星もまた,時間とともに絶えず位置を変えています。その途上,地球から見て同じ方向に差し掛かって,月や惑星,また惑星同士が接近し,場合によっては手前の天体に隠されることもあります。
 月が惑星を隠す現象を「惑星食」といいます。今年は,5月に「金星食」,7月に「火星食」,そして11月の月食中には,月が天王星を隠す「天王星食」も起こります。肉眼での観察は難しいので,ぜひ双眼鏡を用意して挑戦してみてください。

★11月8日 月食中の天王星食

 11月8日の夕方から夜の初めにかけて,条件の良い皆既月食が起こることを前回紹介しました。楽しみはそれに終わらず,もうひとつのビッグな天文ショーがダブルで起こります。天王星が,月食の月に隠されるのです。
 部分月食が始まるころ,双眼鏡でも月のすぐ左下に天王星が近づいているのが見えます。天王星の明るさは5.6等星で,よほど鋭眼の人でないと肉眼では見ることが難しく,観察には双眼鏡が必要です。望遠鏡で見ると,天王星の緑がかった青の神秘的な色とともに,丸い面積体であることも分かります。月食が進行するにつれて,天王星はどんどん月に近づきます。皆既中の赤い月と青い天王星の色の対照がとても興味深いところです。そして20時45分,赤銅色に染まった月の縁に,じわりと吸い込まれていくように消えていきます。21時33分に,部分月食中の赤黒く見える月縁から再び姿を現します。 


★7月21日 深夜の火星食
 7月21日の深夜,東から月が昇ってきたら,そのすぐ右側を注意深く見てください。赤く輝く火星が月に寄り添って輝いているのが分かります。ほどなく火星は月に吸い込まれるように消えていき,約40分後,月の暗い側の縁から再び現れます。
 火星は,12月1日の地球最接近に向けて,明るく輝きだすころ。火星食の様子は,肉眼でも楽しめますが,双眼鏡があれば,さらに詳しく観察できるでしょう。ただし,月に隠れるときは大変低いので,東の低空まで開けた場所で観察できるよう準備をしておきましょう。

★5月27日 月と金星大接近,九州南部では金星食★
 昨年11月8日,9年ぶりの金星食が起こりました。青空の中で,細い月の暗い側に金星が隠され,1時間で再び月の明るい側から現れ,夕方の空には,細い月と金星が寄り添って輝く美しい光景が楽しめました。
 今年も,5月27日の白昼,九州南部以南で金星食が起こります。残念なことにそれ以外の地域では金星食は見られませんが,夕方にかけて,青空の中で月と金星が大接近している様子が楽しめます。空が明るいうちの現象ですので,双眼鏡が必要です。太陽光には十分注意してお楽しみください。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)
2022年の天文現象 第1回

2022.1.8 大崎タイムス連載
「年間天文現象」 

 2022年の干支は,壬寅(みずのえとら)=とら年。私たちが慣れ親しむ西洋の星座には,「とら座」はありませんが,古代中国星座には,神獣・白虎の姿とされているものがあります。有名なオリオン座の中心部は「参宿(しんしゅく)」で,虎が四肢を力強く広げている姿。その上のオリオン座頭部の星の集まりは「觜宿(ししゅく)」で,白虎の口に当たります。オリオン座はこの時期,見やすくなっていますので,ぜひ探してみてください。

写真:白虎が踏ん張る姿「参宿」と「觜宿(ししゅく)」

 昨年は,5月と11月の2度の月食,8月のペルセウス座流星群,11月の金星食など,コロナ禍の中でも私たちを楽しませてくれる天体ショーがたくさんありました。今年も,11月の皆既月食や月食中の月に天王星が隠れる「天王星食」,7月の「火星食」,12月の火星の接近,惑星どうしの大接近など興味深い天文現象が目白押しです。
 今日から5回にわたり,今年の注目の天文現象をご紹介しましょう。

★11月8日 見事な皆既月食★

写真:2021年5月26日の皆既月食


11月8日,皆既月食
 今年最大の天文ショーは,皆既月食です。月食は,太陽,地球,月が一直線に並んだとき,満月が地球の影に入り込むことで暗くなる現象。地球の影には,太陽の一部が差し込む「半影」と,太陽の光が届かない「本影」の2つがあり,今回は,月の全体が本影にすっぽり入り込んで皆既月食となるのです。
 11月8日の大崎の日没は16時30分,月の出は16時21分です。真ん丸の月が東北東の空に姿を現して約40分後,月は半影に差し掛かります。半影月食の始まりです。肉眼では分かりにくいですが,写真には良く写ります。望遠レンズで狙ってみましょう。18時9分には,本影に入り込み,部分月食が始まります。このころになると,肉眼でも欠けている様子が明瞭に分かるようになります。双眼鏡があれば,より詳しく観察できます。月全体が本影に入り込む皆既月食は,19時17分から20時42分まで1時間25分も継続します。月が赤銅色(しゃくどういろ)に染まり,とても美しい光景となります。皆既食の最大は19時57分で,月は本影の深くまで入り込むため,ピーク時には暗い皆既月食になることが予想されます。皆既月食の明るさや色はその都度違いますが,そのときどきの大気の状態を反映しているともいわれます。どのような月食になるか,いまからとても楽しみです。

 なお,この月食の最中に,天王星が月に隠される「天王星食」という珍しい現象が起こります。これについては,次回詳しく紹介いたします。


日食はネット中継で
 太陽が月に隠される「日食」は今年,地球全体で2回起こります。5月1日には,南米から南極方面で部分日食,10月25日にはロシアからインド方面で部分日食がありますが,どちらも日本から見られません。インターネットのライブ中継で楽しむことにしましょう。

(文と写真 大崎生涯学習センター長 遊佐徹)


▲ページトップへ